「最近、運動不足だな……」
「健康診断で血圧やコレステロールを指摘された」
「以前よりお腹が出てきた」
40代、50代になると、このような変化が気になってくる人も少なくありません。
そして、気をつけたい病気のひとつが「心筋梗塞」です。
心筋梗塞は、突然起こることもある重大な病気です。
しかし、ここで大切なのは、心筋梗塞そのものは「生活習慣」ではなく、病気であるということです。
その発症には、年齢や遺伝的な要因だけでなく、喫煙、高血圧、LDLコレステロール高値、糖尿病、肥満、運動不足など、さまざまな要因が関係しています。
厚生労働省も、喫煙、LDLコレステロール高値、高血圧、メタボリックシンドロームなどによって動脈硬化が進むと、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を起こしやすくなると説明しています。
厚生労働省 e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
また、日本循環器学会の「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」でも、冠動脈疾患の予防について、血圧、脂質、糖尿病、喫煙、食事、運動などを総合的に管理する考え方が示されています。
日本循環器学会「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」
つまり、心筋梗塞を完全に防げるわけではありませんが、発症につながるリスク要因を一つずつ見直していくことは大切です。
この記事では、40代・50代から特に意識したい「心筋梗塞のリスクを下げる生活習慣」を7つ紹介します。
1.喫煙をしない・禁煙する
心筋梗塞の予防を考えるなら、まず見直したいのが「喫煙」です。
タバコに含まれる成分は血管に悪影響を与え、動脈硬化を進める要因になります。
厚生労働省も、喫煙を心筋梗塞などの虚血性心疾患に関係する重要なリスク要因として挙げています。
厚生労働省 e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
さらに、141件のコホート研究をまとめたメタ解析では、少量の喫煙であっても冠動脈疾患や脳卒中のリスクとの関連が認められました。
この研究では、1日1本程度の喫煙でも、20本程度の場合に比べて「余分なリスク」が予想以上に大きいことが示されています。
ただし、この研究は観察研究をまとめたメタ解析であり、「1本吸うと必ず○%発症する」という意味ではありません。
PubMed「Low cigarette consumption and risk of coronary heart disease and stroke」
そのため、
「本数を減らせば十分」
と考えるのではなく、
「本数を減らすだけでなく、禁煙を目指すことが大切」
と考えましょう。
受動喫煙にも注意が必要です。
自分が吸わなくても、周囲の人が吸う環境にいる場合は、できるだけ煙を避けることも大切です。
2.血圧を放置しない
「健康診断で血圧が高いと言われたけれど、特に症状がないから大丈夫」
これは注意したい考え方です。
高血圧は、自覚症状がないまま進むことがあります。
血圧が高い状態が続けば、血管に負担がかかり、動脈硬化などを通じて心筋梗塞を含む心血管疾患のリスクにつながります。
厚生労働省も、高血圧を虚血性心疾患に関係する重要なリスク要因として説明しています。
厚生労働省 e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
血圧を下げることと心血管疾患リスクとの関係については、多数の研究があります。
123件の研究、61万人以上を対象とした系統的レビュー・メタ解析では、血圧を下げる治療によって主要な心血管イベントなどのリスクが低下することが示されています。
PubMed「Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death」
大切なのは、自己判断で薬を飲んだり中止したりすることではありません。
健康診断などで血圧について指摘された場合は、
- 家庭血圧を測る
- 医療機関で相談する
- 塩分の摂りすぎを見直す
- 運動習慣をつくる
- 体重を適切に管理する
など、自分に合った方法で管理していきましょう。
3.LDLコレステロールを放置しない
健康診断で、
「LDLコレステロールが高い」
と言われたことはありませんか?
LDLコレステロールは、動脈硬化性疾患を考えるうえで重要な指標のひとつです。
厚生労働省も、LDLコレステロール高値が心筋梗塞などの動脈硬化性疾患につながるリスク要因であると説明しています。
そして、LDLコレステロールを下げることによって心血管イベントが減少することは、複数の無作為化比較試験をまとめた研究でも確認されています。
26件の無作為化試験、約17万人を対象としたメタ解析では、LDLコレステロールをさらに低下させることで、主要な血管イベントや心筋梗塞などが減少しました。
PubMed「Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol」
ただし、
「LDLが高い=必ず心筋梗塞になる」
という意味ではありません。
年齢、血圧、糖尿病、喫煙、家族歴など、さまざまな要因を総合して考える必要があります。
食生活では、脂身の多い肉やバターなど、飽和脂肪酸を多く含む食品の摂りすぎを見直すことも選択肢になります。
そして、健康診断でLDLコレステロールの異常を指摘された場合は、数値を放置せず、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
4.血糖値を適切に管理する
「糖尿病ではないから、自分は心筋梗塞とは関係ない」
とは限りません。
糖尿病は、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患と関係する病気です。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、慢性的な高血糖が続くと、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患を引き起こすことがあると説明されています。
特に2型糖尿病では、遺伝的な要因に加えて、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が発症に関係します。
そのため、
「血糖値を上げない」
と極端に考えるのではなく、
「血糖値を適切に管理する」
という考え方が大切です。
具体的には、
- 食べ過ぎない
- 野菜や食物繊維を意識する
- 運動不足を避ける
- 甘い飲料を習慣的に飲まない
- 健康診断の血糖値やHbA1cを確認する
などが考えられます。
すでに血糖値やHbA1cについて指摘されている場合は、自己流だけで済ませず、医療機関で相談しましょう。
5.運動不足を解消する
運動不足も、心筋梗塞のリスクを考えるうえで無視できません。
日本循環器学会の冠動脈疾患一次予防ガイドラインでも、身体活動・運動について独立した章を設け、冠動脈疾患予防との関係を扱っています。
日本循環器学会「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」
実際に、身体活動と冠動脈疾患について調べた33研究のメタ解析では、余暇の身体活動量が多い人ほど冠動脈疾患リスクが低い傾向が示されています。
研究では、週150分程度の中強度の身体活動を行っている人は、余暇に身体活動をしていない人と比べて冠動脈疾患リスクが低いことが示されました。
ただし、これは主に前向きコホート研究をまとめたメタ解析であり、研究結果だけから「運動すれば心筋梗塞を必ず防げる」と断定することはできません。
PubMed「Dose response between physical activity and risk of coronary heart disease」
だからこそ、最初から激しい運動をする必要はありません。
例えば、
- 10分多く歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- 近所なら車を使わず歩く
- 長時間座り続けない
- 軽い筋力トレーニングを取り入れる
など、できることから始めましょう。
運動習慣がない人がいきなり激しい運動を始める場合は、健康状態を確認してから行うことも大切です。
6.体重・内臓脂肪を増やし過ぎない
40代、50代になると、
「昔と同じように食べているのに太ってきた」
ということがあります。
特にお腹まわりの脂肪が増えてきた場合は、生活習慣を見直すきっかけにしましょう。
肥満やメタボリックシンドロームは、高血圧、血糖異常、脂質異常など複数の心血管リスク因子と関係します。
厚生労働省も、メタボリックシンドロームなどが動脈硬化を進め、心筋梗塞などの虚血性心疾患につながりやすくなることを説明しています。
厚生労働省 e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
また、日本動脈硬化学会のガイドラインでも、動脈硬化性疾患の予防において、体重管理や生活習慣の改善が重要な要素として扱われています。
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
ここで大切なのは、
「とにかく体重を落とせばいい」
と考えないこと。
極端な食事制限ではなく、
- 食べ過ぎを減らす
- 甘い飲料を控える
- 野菜や食物繊維を増やす
- 運動量を増やす
- 筋肉を落としすぎない
など、無理なく続けられる方法を選びましょう。
7.食生活を「心臓にやさしい形」に近づける
毎日の食事も、心筋梗塞のリスクを考えるうえで重要です。
特定の食品を一つ食べれば心筋梗塞を防げる、という話ではありません。
大切なのは、食生活全体のバランスです。
例えば、
- 野菜
- 果物
- 魚
- 豆類
- ナッツ類
- 全粒穀物など
を取り入れ、塩分や飽和脂肪酸、加工食品などの摂りすぎを見直すことが考えられます。
日本循環器学会の冠動脈疾患一次予防ガイドラインでも、食事について、魚、野菜、果物、ナッツなどを含むさまざまな食品・食事パターンについて検討されています。
日本循環器学会「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」
食事パターンについては、スペインで7,447人を対象に行われたPREDIMED研究も有名です。
この研究では、心血管疾患リスクが高いものの、研究開始時に心血管疾患がなかった人を対象に、地中海食にエクストラバージンオリーブオイルまたはナッツを加えた食事などを比較しました。
主要評価項目は、心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡を合わせたもので、地中海食群では対照群より主要心血管イベントが少ない結果となりました。
ただし、この研究では無作為化手順に関する問題が後から確認され、2013年の報告は撤回され、2018年に再解析された結果が掲載されています。
そのため、
「地中海食を食べれば心筋梗塞を○%防げる」
と単純に断定するのは適切ではありません。
研究結果を踏まえても、特定の食品だけに期待するのではなく、野菜・果物・魚・豆類などを含むバランスのよい食生活を続けることを基本にしましょう。
心筋梗塞を遠ざけるために、健康診断を活用しよう
心筋梗塞の予防では、
「症状がないから大丈夫」
ではなく、症状がない段階からリスクを確認することが重要です。
特に40代・50代になったら、
- 血圧
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 中性脂肪
- 血糖値
- HbA1c
- 体重
- 腹囲
などを確認しておきましょう。
また、家族に心筋梗塞などの冠動脈疾患になった人がいる場合は、そのことも医療機関に伝えることが大切です。
日本循環器学会の一次予防ガイドラインでは、冠動脈疾患のリスク評価において、生活習慣だけでなく、年齢、性別、家族歴、既往歴、血圧、脂質、糖尿病、喫煙などを総合的に考えることが重要とされています。
日本循環器学会「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」
こんな症状があったら「様子見」はしない
心筋梗塞で特に怖いのは、発症したときに時間との勝負になることです。
次のような症状が突然現れた場合は、心筋梗塞などの緊急性の高い病気の可能性があります。
- 胸が締めつけられるような痛み
- 胸が押しつぶされるような圧迫感
- 息苦しさ
- 冷や汗
- 吐き気
- 肩や腕、背中などに広がる痛み
- 強い不快感
「少し休めば治るかも」
と待ち続けるのは危険です。
心筋梗塞が疑われる症状が突然出た場合は、救急車を要請するなど、速やかに救急医療につなげることが重要です。
「これは心筋梗塞ではないかもしれない」と自己判断せず、緊急性を考えて行動してください。
今日からできる「心筋梗塞リスク対策」チェックリスト
最後に、今日からできることを確認してみましょう。
□ タバコを吸わない・禁煙を目指す
□ 健康診断で血圧を確認する
□ LDLコレステロールを放置しない
□ 血糖値・HbA1cを確認する
□ 運動不足を少しずつ解消する
□ 長時間座りっぱなしにならない
□ 体重・腹囲の変化を確認する
□ 野菜・果物・魚・豆類などをバランスよく食べる
□ 塩分や脂質の摂りすぎを見直す
□ 健康診断で異常を指摘されたら放置しない
□ 家族に心筋梗塞などの病歴があれば医師に伝える
一度に全部やる必要はありません。
まずは、
「自分が一番できていないことを1つ改善する」
ところから始めてみましょう。
まとめ
心筋梗塞は、生活習慣だけで決まる病気ではありません。
年齢、遺伝的要因、家族歴など、本人には変えられない要因もあります。
一方で、
喫煙
高血圧
LDLコレステロール高値
糖尿病・高血糖
運動不足
肥満・メタボリックシンドローム
食生活
など、見直せる要因もあります。
だからこそ、
「自分は大丈夫」
と考えて何もしないのではなく、
できるところから少しずつリスクを下げていく
ことが大切です。
心筋梗塞のリスクをゼロにすることはできません。
しかし、健康診断で自分の状態を知り、生活習慣を見直し、必要な場合には医療機関で適切な管理を受ける。
その積み重ねが、将来の健康を守るための大切な一歩になります。
40代・50代からの健康管理は、未来の自分への「先行投資」です。
今日できる小さな習慣から始めてみましょう。
参考文献・出典
公的資料・ガイドライン
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」
- 日本循環器学会「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
研究論文
- Hackshaw A, et al. Low cigarette consumption and risk of coronary heart disease and stroke: meta-analysis of 141 cohort studies. BMJ. 2018.
PubMedで論文を見る - Ettehad D, et al. Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2016.
PubMedで論文を見る - Cholesterol Treatment Trialists’ Collaboration. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol. Lancet. 2010.
PubMedで論文を見る - Sattelmair J, et al. Dose response between physical activity and risk of coronary heart disease: a meta-analysis. Circulation. 2011.
PubMedで論文を見る - Estruch R, et al. Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts. N Engl J Med. 2018.
New England Journal of Medicineで論文を見る
注意事項
この記事は、心筋梗塞の予防に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。
健康診断で異常を指摘されている場合、すでに治療を受けている場合、薬を服用している場合などは、自己判断で治療や服薬を変更せず、担当医に相談してください。
また、突然の胸痛、圧迫感、息苦しさ、冷や汗など、心筋梗塞を疑う症状がある場合は、この記事を読み続けず、速やかに救急医療につながってください。
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