「青魚は健康にいい」とよく聞きます。
サバ、イワシ、サンマなどの青魚には、EPAやDHAをはじめとするn-3系脂肪酸が含まれています。
では、青魚を食べると本当に健康寿命を延ばせるのでしょうか?
今回は、青魚に含まれる栄養成分と、魚の摂取と健康との関係を調べた人を対象とした研究を中心に、できるだけわかりやすく整理しました。
先に結論を言うと、
「魚をよく食べる人では、心血管疾患による死亡リスクが低い傾向がある」という研究結果はあります。
一方で、
「青魚を食べれば健康寿命が延びる」とまで証明されたわけではありません。
ここは非常に重要なポイントです。
そもそも「青魚」とは?
一般的に「青魚」と呼ばれているのは、背中が青みがかった魚です。
代表的なものとして、
- サバ
- イワシ
- サンマ
- アジ
などがあります。
青魚の大きな特徴の一つが、EPAやDHAなどのn-3系多価不飽和脂肪酸を含んでいることです。
ただし、魚の種類や季節、脂の乗り方などによって栄養成分の量は変わります。
そのため、「青魚ならすべて同じ栄養価」と考えるのではなく、魚の種類によって違いがあることも知っておきましょう。
青魚にはどんな栄養がある?
青魚には、主に次のような栄養成分が含まれています。
EPA
EPAは、エイコサペンタエン酸と呼ばれるn-3系脂肪酸です。
魚介類に含まれる代表的な脂肪酸の一つで、血液中の脂質や心血管系との関係について、多くの研究が行われています。
DHA
DHAは、ドコサヘキサエン酸と呼ばれるn-3系脂肪酸です。
EPAと同じく魚に多く含まれる脂肪酸で、特に魚を食べることと健康との関係を考えるうえで重要な成分です。
たんぱく質
魚は、良質なたんぱく質を含む食品でもあります。
健康的な食生活を考える場合、脂肪酸だけを見るのではなく、たんぱく質などを含めた食品全体の栄養価を見ることが大切です。
サバ100gにはEPA・DHAがどのくらい含まれる?
文部科学省の「日本食品標準成分表」を確認すると、まさば・生の可食部100gには、脂質16.8g、n-3系多価不飽和脂肪酸2.12gが含まれています。
さらに、その内訳を見るとEPAは約690mg、DHAは約970mgで、EPAとDHAを合わせると約1.66gです。
魚の栄養成分は種類や状態によって変わるため、あくまで一例として考えてください。
詳しい数値は、[文部科学省「食品成分データベース」]で確認できます。
「n-3系脂肪酸17.3g」という数字には注意
食品成分データベースを見ると、まさばの「n-3系多価不飽和脂肪酸」が17.3gと表示されている項目があります。
これを見て、
「サバ100gにn-3系脂肪酸が17.3g入っている」
と考えてしまうと間違いです。
この17.3gは、「脂肪酸総量100gあたり」の割合を示した数値です。
実際の「可食部100gあたり」のn-3系多価不飽和脂肪酸は2.12gです。
栄養成分表では、どの基準の数字なのかを確認することが大切です。
青魚を食べる人は健康なの?
ここからが本題です。
青魚を含む魚を食べることと、健康との関係については、これまでに多くの研究が行われています。
特に研究が多いのが、心筋梗塞や脳卒中などを含む心血管疾患との関係です。
魚を食べる量が多い人ほど、心血管疾患死亡リスクが低い傾向
2021年に発表されたメタ解析では、魚の摂取量と心血管疾患による死亡リスクを調べた25件の前向きコホート研究がまとめられています。
対象者は合計約202万人、心血管疾患による死亡は約10万件でした。
その結果、魚を食べる量が多い人は、少ない人と比べて心血管疾患による死亡リスクが低い傾向がありました。
研究全体では、魚の摂取と心血管疾患死亡との関連は、
RR 0.91(95%信頼区間 0.85~0.98)
でした。
また、魚を1日20g多く食べることと、心血管疾患死亡リスクが約4%低いこととの関連も報告されています。
この研究の詳しい内容は、[PubMed掲載の研究論文]で確認できます。
ただし、これは「食べれば4%下がる」という意味ではありません
ここは特に注意が必要です。
先ほどの研究は、主に観察研究をまとめたメタ解析です。
つまり、
「魚を多く食べた人」と「魚をあまり食べなかった人」を長期間追跡して、その違いを調べた研究です。
そのため、
「魚を1日20g追加すれば、その人の死亡リスクが4%下がる」
と証明したものではありません。
魚をよく食べる人は、魚以外の食事内容、運動習慣、喫煙、飲酒、生活環境などにも違いがある可能性があります。
したがって、この研究結果から言えるのは、
「魚をよく食べる人では、心血管疾患死亡リスクが低い傾向が観察されている」
というところまでです。
「魚がその原因である」と断定することはできません。
EPA・DHAの研究ではどうなの?
魚そのものだけではなく、EPAやDHAなどのn-3系脂肪酸についても研究があります。
2021年に発表された38件のランダム化比較試験(RCT)をまとめたメタ解析では、合計149,051人を対象に、オメガ3脂肪酸の介入と心血管系の結果が調べられました。
この研究では、オメガ3脂肪酸の介入によって、
- 心血管死亡
- 非致死性心筋梗塞
- 冠動脈疾患イベント
- 主要心血管イベント
などが減少する方向の結果が報告されています。
一方で、心房細動の発症は増加する結果も報告されています。
詳しい研究結果は、[PubMed掲載のオメガ3脂肪酸メタ解析]で確認できます。
ここでも「魚を食べること」と「サプリメント」を分けて考える必要があります
非常に重要なのが、この研究はオメガ3脂肪酸を用いた介入研究だということです。
つまり、
「魚を食べること」そのものを調べた研究とは別です。
オメガ3脂肪酸のサプリメントや介入による研究結果を、そのまま
「青魚を食べれば同じ効果が得られる」
と考えることはできません。
魚にはEPAやDHAだけでなく、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどさまざまな栄養成分が含まれています。
そのため、食品として魚を食べる場合と、特定の成分をサプリメントなどで摂取する場合は、分けて考える必要があります。
青魚を食べれば健康寿命が延びる?
ここが今回の一番重要なポイントです。
現在の研究から、
「魚をよく食べる人では、心血管疾患死亡リスクが低い傾向がある」
とは言えます。
しかし、
「青魚を食べることで健康寿命が○年延びる」
と断定できるだけの根拠はありません。
健康寿命は、心血管疾患だけで決まるものではありません。
がん、糖尿病、認知機能、運動習慣、睡眠、喫煙、飲酒、体重、社会的環境など、さまざまな要因が関係しています。
そのため、青魚だけを食べれば健康寿命が延びるという考え方は適切ではありません。
「現時点で言えること」
現在の研究から、比較的言いやすいのは次のようなことです。
1.魚を食べる習慣と心血管疾患死亡リスクの低さには関連がある
複数の前向きコホート研究をまとめたメタ解析では、魚の摂取量が多い人ほど心血管疾患死亡リスクが低い傾向が確認されています。
2.青魚はEPA・DHAなどのn-3系脂肪酸を含む
サバ、イワシ、サンマなどは、EPAやDHAを含む食品です。
3.魚は栄養価の高い食品の一つ
EPA・DHAだけでなく、たんぱく質なども含まれているため、バランスのよい食生活の中で取り入れやすい食品です。
「現時点で言えないこと」
一方で、次のようなことは断定できません。
1.青魚を食べれば健康寿命が延びる
現在の研究だけでは、青魚を食べることで健康寿命が延びると証明されたわけではありません。
2.青魚を食べれば病気にならない
魚を食べていても、心筋梗塞や脳卒中などを完全に防げるわけではありません。
3.EPA・DHAサプリメントと魚を食べることは同じ
EPA・DHAなどの介入研究の結果を、そのまま魚を食べることに当てはめることはできません。
青魚はどのくらい食べればいい?
「何g食べれば健康になれる」という明確な数字を、今回の研究だけから決めることはできません。
大切なのは、青魚だけに偏ることではなく、魚・野菜・豆類・穀類などを組み合わせたバランスのよい食生活です。
例えば、
- 焼きサバ
- イワシの煮付け
- サンマの塩焼き
- アジの焼き魚
- サバ缶を使った料理
など、普段の食事に無理なく取り入れる方法があります。
缶詰を利用する場合は、塩分が気になる人は食塩量も確認するとよいでしょう。
青魚を食べるときの注意点
青魚は栄養価の高い食品ですが、「たくさん食べるほど健康になる」と考えるのはおすすめできません。
魚には種類によって、水銀などの問題もあります。
厚生労働省は、魚介類について、栄養面から重要な食品である一方、一部の魚には比較的多くの水銀が含まれる場合があるとして、魚種を偏って大量に食べないことなどについて情報提供しています。
日本人の平均的な水銀摂取量については、現時点で健康への影響が懸念されるレベルではないとされています。
詳しくは、[厚生労働省「魚介類に含まれる水銀について」]を確認してください。
特に妊娠中の方などは、厚生労働省の最新情報を確認することをおすすめします。
青魚は「健康寿命を延ばす食品」なのか?
今回調べた研究を総合すると、
青魚は、健康的な食生活に取り入れる価値のある食品の一つ
と考えるのが妥当です。
魚をよく食べる人では、心血管疾患による死亡リスクが低い傾向が複数の研究で確認されています。
また、青魚にはEPAやDHAなどのn-3系脂肪酸が含まれています。
一方で、
「青魚を食べれば健康寿命が延びる」
とまで言うには、まだ根拠が不足しています。
健康寿命を考えるなら、青魚だけに注目するのではなく、
魚・野菜・豆類・果物・全粒穀物などを組み合わせた、全体としてバランスのよい食生活
を目指すことが大切です。
まとめ
今回の調査でわかったことをまとめます。
- 青魚にはEPAやDHAなどのn-3系脂肪酸が含まれている
- サバ、イワシ、サンマなどは日常の食事に取り入れやすい
- 魚の摂取量が多い人では、心血管疾患死亡リスクが低い傾向が報告されている
- ただし、これらの研究の多くは観察研究であり、魚を食べることが死亡リスク低下の原因だと断定はできない
- EPA・DHAなどの介入研究は、魚そのものを食べる研究とは分けて考える必要がある
- 青魚を食べれば健康寿命が延びる、とまでは現在の科学的根拠から言えない
- 青魚は、バランスのよい食生活の一部として取り入れるのが現実的
「青魚だけで健康寿命を伸ばす」のではなく、「健康的な食生活の中に青魚を取り入れる」
これが、現在の科学的根拠から考えたときの、もっとも無理のない結論です。
今回の「奇跡スコア」
88点/100点
今回の評価は、
- 科学的根拠:18/20
- 栄養:19/20
- 安全性:16/20
- 日常性:18/20
- 商品化可能性:17/20
としました。
ただし、この「奇跡スコア」は当社独自の評価基準による内部評価です。
「青魚を食べると88%の確率で健康になる」という意味ではありません。
研究の質、栄養面、日常生活への取り入れやすさ、安全性などを総合的に評価したものです。
参考・研究情報
魚の摂取と心血管疾患死亡
Jiang L, Wang J, Xiong K, et al.
「Intake of Fish and Marine n-3 Polyunsaturated Fatty Acids and Risk of Cardiovascular Disease Mortality: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies」
Nutrients. 2021;13(7):2342.
[PubMedで研究内容を見る]
オメガ3脂肪酸と心血管疾患
Patel A, et al.
「Effect of omega-3 fatty acids on cardiovascular outcomes: A systematic review and meta-analysis」
EClinicalMedicine. 2021.
[PubMedで研究内容を見る]
サバの栄養成分
文部科学省「食品成分データベース」
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
魚介類と水銀について
厚生労働省
[厚生労働省の情報を見る]
注意事項
この記事は、公開されている科学的研究や公的情報をもとに、食品と健康について一般的な情報を提供するものです。
特定の食品を食べることで病気を予防・治療できることを保証するものではありません。
また、青魚やEPA・DHAを医薬品の代わりとして使用することを推奨するものでもありません。
持病がある方、服薬中の方、妊娠中の方などは、食事やサプリメントについて変更する前に、医師や薬剤師などの専門家に相談してください。
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