「最近、朝起きても疲れが取れない」
「夜更かしすることが増えた」
「睡眠時間が短くても、つい頑張ってしまう」
そんな人は、毎日の睡眠を一度見直してみるとよいかもしれません。
健康寿命を考えるうえで、睡眠は重要な生活習慣の一つです。
睡眠は、単に体を休めるだけではありません。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、良い睡眠を確保することは、心身の健康を維持するうえで重要とされています。成人については、個人差を踏まえながら、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することが推奨されています。
ただし、
「6時間寝れば誰でも十分」
という意味ではありません。
必要な睡眠時間には個人差があります。
また、睡眠は時間だけでなく、
「眠って休めたと感じるか」
という「睡眠休養感」も大切です。
今回は、健康寿命を意識した生活習慣の一つとして、十分な睡眠時間を確保することについて、科学的根拠をもとに解説します。
睡眠は健康寿命とどう関係する?
睡眠時間が極端に短い状態が続くと、さまざまな健康上の問題との関連が報告されています。
厚生労働省の睡眠ガイドでは、極端な短時間睡眠について、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などとの関連が紹介されています。
ただし、ここで重要なのは、
「睡眠時間が短いと、必ずこれらの病気になる」
という意味ではないことです。
睡眠時間と健康状態には関連が報告されていますが、観察研究では、生活習慣や既往症など、ほかの要因が結果に影響している可能性があります。
そのため、
「睡眠時間を増やせば病気を防げる」
と単純に考えるのではなく、
「必要な睡眠時間を確保し、睡眠の質や休養感も含めて睡眠習慣を整える」
ことが大切です。
成人は「6時間以上」を一つの目安に
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人について、
「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」
ことが推奨されています。
一方で、必要な睡眠時間には個人差があります。
厚生労働省のガイドでは、成人のおおよその適正な睡眠時間を6~8時間程度としながら、個人差や日中の活動量などを考慮する必要があるとしています。
つまり、
「全員が必ず7時間」
というように、一つの数字だけで判断するものではありません。
日中の眠気や疲労感、睡眠休養感なども含めて、自分に必要な睡眠時間を考えることが重要です。
「長く寝れば健康」というわけではない
睡眠については、
「短い睡眠は悪い。だから長く寝ればいい」
と考えてしまいがちです。
しかし、これは正確ではありません。
成人を対象とした複数のシステマティックレビューをまとめた研究では、睡眠時間とさまざまな健康アウトカムとの関係について、7~8時間程度の睡眠が最も好ましい関連を示す傾向が報告されています。ただし、研究によって対象や健康アウトカムが異なり、睡眠時間そのものが健康状態を直接引き起こすと判断することはできません。
また、高齢者を対象としたメタ解析では、短時間睡眠だけでなく長時間睡眠も死亡リスクとの関連が報告されています。
ただし、長時間睡眠そのものが死亡リスクを高める原因なのか、病気や体調不良などによって睡眠時間が長くなっているのかについては、慎重な解釈が必要です。
だからこそ、
「とにかく長く寝る」
のではなく、
「自分に必要な睡眠時間を確保し、日中に十分活動できる状態を目指す」
ことが大切です。
「睡眠時間」だけでなく「睡眠休養感」も大切
健康づくりのための睡眠を考えるうえで、もう一つ重要なのが、
睡眠休養感
です。
睡眠休養感とは、簡単にいえば、
「睡眠によって休めたと感じる感覚」
のことです。
例えば、
- 7時間寝たのに朝から疲れている
- 夜中に何度も目が覚める
- 十分寝たはずなのに日中眠い
- 朝起きてもスッキリしない
という場合、睡眠時間だけを見て「十分な睡眠がとれている」と判断するのは適切ではありません。
厚生労働省も、睡眠時間の確保だけでなく、生活習慣や睡眠環境を見直して睡眠休養感を高めることを推奨しています。
今日からできる睡眠習慣
睡眠を整えるために、まずは毎日の生活を見直してみましょう。
1.睡眠時間を削りすぎない
仕事や家事などで睡眠時間を後回しにしていませんか?
まずは、必要な睡眠時間を確保できるよう、就寝時間を見直してみましょう。
2.起床時間を大きく乱さない
休日に極端に遅くまで寝るなど、起床時間が大きく変わる生活は、睡眠リズムを乱す原因になることがあります。
できる範囲で、規則的な生活を意識しましょう。
3.日中に適度に身体を動かす
日中に身体を動かすことも、良い睡眠を支える生活習慣の一つです。
散歩や家事など、無理のない範囲で身体を動かしましょう。
4.寝室の環境を見直す
光、温度、音など、睡眠を妨げている環境がないか確認してみましょう。
寝具や室温など、自分が眠りやすい環境を整えることも大切です。
5.「寝ても休めない」が続くなら放置しない
十分な時間寝ているのに強い眠気が続く、睡眠休養感が低い、眠りに関する不調が続いている。
このような場合には、単なる生活習慣だけではなく、睡眠障害などが関係している可能性もあります。
厚生労働省も、睡眠の不調や睡眠休養感の低下がある場合には、生活習慣の改善だけでなく、病気が潜んでいる可能性にも注意するよう示しています。
気になる症状が続く場合は、医療機関などの専門家に相談しましょう。
40代・50代は「睡眠を削らない」ことを意識
仕事、家事、子育て、介護など、40代・50代は生活の中で多くの役割を抱えやすい年代です。
その結果、
「あと少し仕事をしてから寝よう」
「睡眠時間を削って家事を終わらせよう」
と、睡眠が後回しになってしまうことがあります。
しかし、睡眠不足を当たり前にしてしまうのはおすすめできません。
厚生労働省によると、日本では20~59歳の各年代で、睡眠時間が6時間未満の人が約35~50%を占めていた調査結果もあります。
忙しい年代だからこそ、
「睡眠を削ることを前提にしない」
という考え方も大切です。
60代・70代は「寝床にいる時間」にも注意
高齢期になると、若い頃と比べて睡眠の状態が変化することがあります。
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、高齢者について、
床上時間が8時間以上にならないことを一つの目安として、必要な睡眠時間を確保する
ことが推奨されています。
ここで注意したいのは、
「高齢者は8時間寝てはいけない」
という意味ではないことです。
「床上時間」は、実際に眠っている時間とは異なります。
必要な睡眠時間には個人差があるため、単純に「8時間」という数字だけで判断するのではなく、日中の活動状況や睡眠休養感なども考慮する必要があります。
また、長時間の昼寝は夜間の良眠を妨げる可能性があるため、高齢者では長時間の昼寝を避け、日中はできるだけ活動的に過ごすことも推奨されています。
健康寿命を考えるなら「睡眠も生活習慣の一部」と考える
健康寿命を守るために、
「運動しなければ」
「食事に気をつけなければ」
と考える人は多いでしょう。
しかし、睡眠も健康的な生活を構成する重要な要素です。
WHOも健康を維持する生活習慣の一つとして、十分な睡眠を挙げています。
ただし、睡眠だけで健康寿命が決まるわけではありません。
身体活動、食事、喫煙、飲酒、社会とのつながり、口腔健康など、さまざまな生活習慣や健康状態が関係します。
だからこそ、
「睡眠だけを改善すれば大丈夫」
と考えるのではなく、生活全体を少しずつ整えていくことが大切です。
「魔法の生活習慣」は、特別な健康法ではありません
「魔法」という言葉を使うと、何か特別な方法を想像するかもしれません。
でも、本当に大切なのは、特別な健康法ではありません。
毎日きちんと眠る。
自分に必要な睡眠時間を確保する。
眠っても休めない状態を放置しない。
そうした基本的な習慣の積み重ねです。
健康寿命を延ばす効果を睡眠だけで保証することはできませんが、睡眠を整えることは、健康的な生活を支える一つの重要な取り組みです。
今日からまず、
「あと30分だけでも早く寝られないか?」
と、自分の生活を見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ|健康寿命のために睡眠を大切にしよう
今回のポイントをまとめます。
- 成人は6時間以上を一つの目安として必要な睡眠時間を確保する
- 必要な睡眠時間には個人差がある
- 睡眠時間だけでなく睡眠休養感も大切
- 長く寝れば寝るほど健康というわけではない
- 高齢者は床上時間が長くなりすぎないよう注意する
- 日中の活動や睡眠環境も見直す
- 睡眠の不調が続く場合は、睡眠障害などの可能性も考える
- 睡眠だけでなく、運動・食事など生活全体を整える
健康寿命を守るために、まずは今日の睡眠から見直してみましょう。
「眠る時間を大切にすることも、健康への投資です。」
本記事について
本記事は、健康に関する一般的な情報を提供することを目的としており、診断や治療を目的としたものではありません。
睡眠に関する症状が続いている方、日中の強い眠気がある方、持病がある方、治療中の方は、自己判断で大きく生活習慣を変更せず、医師や医療専門職に相談してください。
主な参考情報
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023の推奨事項一覧」
- Silva AA et al. Sleep duration and mortality in the elderly: a systematic review with meta-analysis. BMJ Open. 2016;6. DOI: 10.1136/bmjopen-2015-008119.
- He M et al. The relationship between sleep duration and all-cause mortality in the older people: an updated and dose-response meta-analysis. BMC Public Health. 2020.
- Cappuccio FP et al. / systematic review overview on sleep duration and health in adults. Sleep duration and health in adults: an overview of systematic reviews. 2020.
- WHO「Self-care for health and well-being」2026.
医療上の注意:本記事だけを根拠として診断・治療・個別の医療判断を行わないでください。
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