THE JAPAN DIETとは?健康寿命と長寿を支える日本食の科学的根拠を解説
「日本食は健康にいい」「日本人は長寿だから、日本食にも長寿の秘密があるのでは?」
このような話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際、日本食や日本食パターンと、死亡リスク・心血管疾患・認知機能などとの関連を調べた研究は、これまで日本で数多く行われています。
その中でも注目されているのが、**「THE JAPAN DIET(ザ・ジャパン・ダイエット)」**です。
THE JAPAN DIETは、単なる「昔ながらの和食」ではありません。
日本動脈硬化学会が、動脈硬化予防に役立つ食事として推奨している、日本食パターンをベースにした食事の考え方です。
この記事では、THE JAPAN DIETとは何なのか、日本食と健康寿命・長寿との関係について、実際の研究論文や公的資料を確認しながら、できるだけわかりやすく解説します。
THE JAPAN DIETとは?
THE JAPAN DIETは、日本動脈硬化学会が動脈硬化予防に役立つ食事として推奨している「日本食パターン」のことです。
基本となるのは、
- 減塩
- 主食・主菜・副菜を組み合わせる
- 魚を取り入れる
- 大豆製品を取り入れる
- 野菜をしっかり食べる
- 海藻やきのこを取り入れる
- 果物を取り入れる
- 未精製穀類などを取り入れる
- 肉の脂身や動物性脂肪を控える
- 加工肉を控える
といった食生活です。
日本動脈硬化学会は、特に「減塩した日本食パターン」を基本として、主食・主菜・副菜をそろえることを推奨しています。
【出典:日本動脈硬化学会「The Japan Diet 食生活を見直しましょう」】
また、日本動脈硬化学会の資料では、THE JAPAN DIETでおすすめする食品として、未精製穀類、魚、大豆・大豆製品、野菜、海藻、きのこ、こんにゃく、果物などが挙げられています。
【出典:日本動脈硬化学会「The Japan Diet ダイジェスト版」】
「日本食」と「THE JAPAN DIET」は同じではない
ここは重要なポイントです。
「日本食」と聞くと、
- 味噌汁
- 漬物
- 焼き魚
- ご飯
- 煮物
などを思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、これらをたくさん食べれば必ず健康になるという意味ではありません。
例えば、昔ながらの日本食には、塩分の多い味噌汁や漬物、塩蔵食品なども含まれます。
食塩を多く摂る食生活は、高血圧などを通じて心血管疾患のリスクに関係します。
そのためTHE JAPAN DIETでは、単純に「昔の日本食に戻る」のではなく、日本食の特徴を活かしながら、減塩などを意識して現代の健康課題に合わせることが重要になります。
日本動脈硬化学会の公式資料でも、減塩した日本食パターンを基本として、主食・主菜・副菜をそろえる考え方が示されています。
【公的資料:日本動脈硬化学会「The Japan Diet」】
「日本食パターン」とTHE JAPAN DIETにも違いがある
もう一つ注意したいのが、「日本食パターン」という言葉です。
研究論文では「Japanese dietary pattern」「Japanese-style diet」などの言葉が使われていますが、研究によって、その定義や構成する食品は異なります。
そのため、
研究で使われる「日本食パターン」=日本動脈硬化学会が推奨するTHE JAPAN DIET
とは限りません。
これは、研究結果を正しく読み取るうえで非常に重要なポイントです。
日本動脈硬化学会が推奨するTHE JAPAN DIETについては、公式資料で詳しい考え方を確認できます。
【公式資料:日本動脈硬化学会「The Japan Diet」】
日本食を食べる人は長生きなの?
では、実際の研究ではどうなのでしょうか。
日本食パターンと死亡リスクについて、日本人を対象にした大規模な研究があります。
約9万人の日本人を対象にした大規模研究
2021年にEuropean Journal of Nutritionに発表された研究では、全国11地域の45~74歳の日本人、92,969人を対象に、日本食への適合度と死亡リスクとの関連が調べられました。
研究では、
- 米
- 味噌汁
- 海藻
- 漬物
- 緑黄色野菜
- 魚
- 緑茶
などの摂取量をもとに日本食指数を作成し、日本食への適合度を評価しています。
中央値18.9年間の追跡期間中に20,596人の死亡が確認されました。
その結果、日本食指数が最も高いグループでは、最も低いグループと比較して、
- 全死亡:ハザード比0.86
- 心血管疾患死亡:ハザード比0.89
でした。
つまり、この研究では、日本食への適合度が高い人ほど、全死亡や心血管疾患死亡のリスクが低いという関連が認められました。
【研究論文:Matsuyama S, et al.「Association between adherence to the Japanese diet and all-cause and cause-specific mortality」PubMed】
ただし、これは前向きコホート研究による観察研究です。
「日本食を食べたから死亡リスクが下がった」と因果関係を証明した研究ではありません。
日本食を好む人には、運動習慣、喫煙習慣、飲酒、体格、社会経済的背景など、食事以外の健康に関係する特徴がある可能性もあります。
そのため、
「日本食への適合度が高い人ほど死亡リスクが低かった」
というところまでが、この研究から慎重に言えることです。
日本食と心血管疾患についてのメタ解析
一つの研究だけではなく、複数の研究をまとめた「メタ解析」もあります。
2022年に発表された系統的レビュー・メタ解析では、日本人を対象にした日本食パターンの研究9件、約46万9,000人分のデータが検討されました。
その結果、日本食パターンへの適合度が高い人は、低い人と比較して、
- 心血管疾患死亡:RR 0.83
- 脳卒中死亡:RR 0.80
- 心疾患・虚血性心疾患死亡:RR 0.81
という関連が示されました。
【研究論文:Shirota M, et al.「Japanese-Style Diet and Cardiovascular Disease Mortality」PubMed】
【論文全文:PMC(無料)】
ただし、このメタ解析にも注意点があります。
対象となった研究の多くは1980~1990年代に食事調査を行ったものであり、現在の日本人の食生活とは異なる可能性があります。
また、同じコホートを異なる方法で解析した研究が含まれていることも、研究上の限界として著者らが指摘しています。
したがって、この結果だけから、
「日本食を食べれば心血管疾患を予防できる」
と断定することはできません。
日本食は健康寿命にも関係する?
日本食と「健康寿命」に関連する研究もあります。
特に注目されるのが、宮城県大崎地域の住民を対象としたOhsaki Cohort Studyです。
2022年に発表されたレビューでは、日本食と、
- 死亡
- 機能障害
- 認知症
との関連について検討されています。
日本食指数が高いグループでは、低いグループと比較して、
- 全死亡:HR 0.91
- 機能障害:HR 0.79
- 認知症:HR 0.79
という関連が報告されています。
【研究論文:Matsuyama S, et al.「Japanese Diet and Mortality, Disability, and Dementia」PubMed】
【論文全文:PMC(無料)】
ここで注意したいのは、「機能障害」という言葉です。
この研究が直接「要介護状態になるかどうか」を証明したという意味ではありません。
そのため、この記事では「要介護状態につながる機能障害」と断定せず、研究で評価された**「機能障害(functional disability)」**という表現を使用しています。
また、認知症についても、日本食を食べれば認知症を予防できると証明されたわけではありません。
あくまで、日本食への適合度と機能障害・認知症との関連が報告されたものです。
2025年にも日本食と死亡リスクの研究が報告
日本食と健康についての研究は、過去の研究だけではありません。
2025年には、JPHC Studyから日本食指数と死亡リスクについての新しい研究が発表されています。
この研究では、重大な疾患のない45~74歳の日本人93,049人を対象としました。
伝統的な日本食指数には、
- 米
- 味噌汁
- 海藻
- 漬物
- 野菜
- 非塩蔵の魚介類
- 塩蔵の魚介類
- 緑茶
- 果物
- 大豆製品
- きのこ
- 調味による食塩
- 牛肉・豚肉の摂取量
など13項目が含まれています。
中央値18.9年間の追跡期間中、23,338人の死亡が確認されました。
その結果、複数の日本食指数において、日本食への適合度が高いことと、全死亡および心血管疾患死亡が少ないこととの関連が認められました。
【研究論文:Murai U, et al.「Japanese Diet Index Score and Cause-Specific Mortality」PubMed】
この研究でも、あくまで観察研究であるため、「日本食が死亡を減らした」と因果関係を証明したものではありません。
しかし、過去の研究に加えて比較的新しい大規模研究でも同様の方向性が報告されていることは、日本食パターンを考えるうえで興味深いポイントです。
THE JAPAN DIETで注目したい食品
ここまでの研究を見ると、日本食パターンにはさまざまな食品が含まれていることがわかります。
特に取り入れたいのが、
魚
魚には良質なたんぱく質や脂質が含まれています。
特に青魚にはEPAやDHAなどのn-3系脂肪酸が含まれています。
大豆製品
豆腐、納豆、味噌などの大豆製品も、日本食の重要な構成要素です。
植物性たんぱく質や食物繊維などを摂取できます。
野菜
緑黄色野菜を含め、さまざまな野菜を食べることが重要です。
食物繊維やビタミン、ミネラルなどを摂取できます。
海藻・きのこ
海藻やきのこは、日本食らしい食品の一つです。
食物繊維などの摂取源になります。
果物
果物からはビタミン、ミネラル、食物繊維などを摂取できます。
ただし、食べれば食べるほど健康になるという意味ではありません。
緑茶
緑茶も日本食パターンの研究で評価されることのある食品です。
ただし、緑茶だけを飲めば健康寿命が延びるという単純な話ではありません。
大切なのは、これらを単品で考えるのではなく、食事全体の組み合わせとして考えることです。
【食品の具体例:日本動脈硬化学会「The Japan Diet ダイジェスト版」】
減塩はTHE JAPAN DIETの重要なポイント
THE JAPAN DIETを実践するうえで、特に意識したいのが「減塩」です。
日本食には、味噌、醤油、漬物など、塩分を含む食品や調味料が多く使われることがあります。
そのため、
- 味噌汁は具材を増やして汁を飲みすぎない
- 醤油やソースは「かける」より「つける」
- 漬物を食べすぎない
- だし、酢、香辛料などを活用する
- 加工食品やインスタント食品の食塩量を確認する
などの工夫が考えられます。
日本動脈硬化学会も、THE JAPAN DIETでは減塩した日本食パターンを基本としています。
【公的資料:日本動脈硬化学会「The Japan Diet」】
普段の食事にどう取り入れる?
THE JAPAN DIETを難しく考える必要はありません。
例えば、普段の食事を次のように考えてみましょう。
朝食
- ご飯
- 野菜入りの味噌汁
- 納豆
- 野菜や海藻
昼食
- ご飯
- 焼き魚
- 野菜のおかず
- 海藻やきのこ
夕食
- ご飯
- 魚や大豆製品などの主菜
- 野菜のおかず
- きのこ・海藻
- 果物
もちろん、毎食この形にする必要はありません。
重要なのは、魚・大豆製品・野菜・海藻・きのこ・果物などを組み合わせ、塩分や脂質の摂りすぎに注意しながら、全体のバランスを整えることです。
昔の日本食に戻るという意味ではない
「日本食が健康にいいなら、昔の日本人と同じ食生活にすればいい」
という考え方には注意が必要です。
昔の日本食には健康的な面がある一方で、食塩摂取量が多くなりやすいという問題もあります。
そのためTHE JAPAN DIETは、
「昔の日本食をそのまま再現すること」
ではありません。
日本食の良い特徴を活かしながら、
- 減塩する
- 食品の種類を増やす
- 野菜を十分に摂る
- 魚や大豆製品を取り入れる
- 肉の脂身や加工肉を控える
- 食べすぎを避ける
など、現代の健康課題に合わせて食生活を整えることが重要です。
【参考:日本動脈硬化学会「The Japan Diet」】
科学的根拠をどう評価すればいい?
ここまで紹介した研究を見ると、
「日本食は健康に良さそう」
という印象を持つかもしれません。
実際、日本食パターンと死亡リスクや心血管疾患死亡などの間には、複数の観察研究やメタ解析で一定の関連が報告されています。
一方で、重要なのは、
「関連がある」ことと「原因である」ことは違う
ということです。
例えば、日本食をよく食べる人は、
- 運動習慣がある
- 喫煙しない
- 飲酒量が少ない
- 健康診断を受けている
- 体重管理をしている
など、食事以外の生活習慣も健康的である可能性があります。
こうした要因を研究で完全に取り除くことは難しいため、観察研究だけから「日本食が長寿の原因」と断定することはできません。
一方で、大規模な前向きコホート研究や複数研究をまとめたメタ解析で、同じ方向性の結果が報告されていることには一定の意味があります。
現時点では、
「日本食パターンを中心としたバランスの良い食生活は、健康的な生活習慣の一つとして検討する価値がある」
と考えるのが、科学的には妥当でしょう。
続けるために大切なこと
健康的な食事で最も重要なのは、「完璧にすること」ではありません。
毎日の食事を少しずつ改善し、それを長く続けることです。
例えば、
「毎日魚を食べなければいけない」
「毎食、和食にしなければいけない」
と考える必要はありません。
まずは、
- 週に何回か魚を食べる
- 豆腐や納豆などの大豆製品を取り入れる
- 野菜のおかずを一品増やす
- 味噌汁を薄味にする
- 醤油を少し減らす
- 加工肉を食べる頻度を減らす
- 海藻やきのこを取り入れる
といった小さな工夫から始めるのもよいでしょう。
まとめ
THE JAPAN DIETは、日本動脈硬化学会が動脈硬化予防に役立つ食事として推奨している、日本食パターンをベースにした食事の考え方です。
特徴は、
- 減塩
- 主食・主菜・副菜の組み合わせ
- 魚
- 大豆製品
- 野菜
- 海藻
- きのこ
- 果物
- 未精製穀類
- 肉の脂身や加工肉を控える
などです。
日本人を対象とした大規模な観察研究では、日本食への適合度が高い人ほど全死亡や心血管疾患死亡が少ないという関連が報告されています。
また、複数の研究をまとめたメタ解析でも、日本食パターンと心血管疾患死亡などとの間に関連が報告されています。
さらに、機能障害や認知症との関連を調べた研究や、2025年に発表された新しい大規模研究でも、日本食パターンと健康指標との関連が報告されています。
ただし、現時点では、
「THE JAPAN DIETを食べれば健康寿命が延びる」
と因果関係まで証明されたわけではありません。
日本食を「魔法の食事」と考えるのではなく、
魚・大豆・野菜・海藻・きのこ・果物などをバランスよく取り入れ、減塩を意識した食生活
として考えることが大切です。
健康寿命を意識するなら、特定の食品だけに注目するのではなく、食事全体のバランス、運動、睡眠、禁煙などを含めた生活習慣全体を整えていきたいですね。
参考文献・情報源
研究論文
Matsuyama S, et al.
Association between adherence to the Japanese diet and all-cause and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based Prospective Study.
European Journal of Nutrition. 2021;60(3):1327-1336.
PubMedで論文を確認する
Shirota M, Watanabe N, Suzuki M, Kobori M.
Japanese-Style Diet and Cardiovascular Disease Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies.
Nutrients. 2022;14(10):2008.
PubMedで論文を確認する
PMCで全文を読む(無料)
Matsuyama S, Shimazu T, Tomata Y, et al.
Japanese Diet and Mortality, Disability, and Dementia: Evidence from the Ohsaki Cohort Study.
Nutrients. 2022;14(10):2034.
PubMedで論文を確認する
PMCで全文を読む(無料)
Murai U, et al.
Japanese Diet Index Score and Cause-Specific Mortality in Japanese Men and Women: The Japan Public Health Center-Based Prospective Study.
The Journal of Nutrition. 2025;155(11):3726-3736.
PubMedで論文を確認する
公的・学術団体資料
一般社団法人 日本動脈硬化学会
日本動脈硬化学会「The Japan Diet 食生活を見直しましょう」
日本動脈硬化学会「The Japan Diet ダイジェスト版」
注意事項
本記事は、食品や食生活について公開されている研究論文・公的資料をもとに、一般的な情報をわかりやすく紹介することを目的としています。
本記事で紹介した研究の多くは観察研究であり、特定の食品や食事法が病気を予防したり、寿命を延ばしたりすることを証明するものではありません。
健康状態や持病、服薬状況などによって適切な食事は異なる場合があります。
病気の治療中の方、食事療法を指示されている方、健康上の不安がある方は、自己判断で食事療法を変更せず、医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。
奇跡の食べ物・編集部の評価
THE JAPAN DIET:90 / 100
日本人を対象とした大規模な観察研究やメタ解析などで、日本食パターンと死亡リスク・心血管疾患などとの関連が報告されています。
一方で、「日本食を食べれば健康寿命が延びる」と因果関係まで証明されているわけではありません。
そのため、科学的根拠を過大評価せず、バランスの良い食生活を続けるための一つの考え方として評価します。
※この「90 / 100」は「健康になる確率」や「寿命が延びる確率」を示す医学的な数値ではありません。「奇跡の食べ物」編集部による独自評価です。

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