健康診断で腹囲や血糖値が気になり、「内臓脂肪は炎症やインスリン抵抗性につながる」と聞いたことがあるかもしれません。結論として、内臓脂肪の過剰な蓄積、脂肪組織の低度の慢性炎症、インスリン抵抗性には関連を示す知見があります。 ただし、内臓脂肪だけで個人の健康状態が決まるわけではありません。
まず知りたい3つの言葉
内臓脂肪は、おなかの内側で腸の周囲などにある脂肪です。脂肪組織は単なる貯蔵庫ではなく、体の状態を伝える物質を出す組織でもあります。
ここでいう慢性炎症は、けがや感染症で起こる強い炎症とは異なる、低度の炎症が続く状態です。痛みや発熱として自覚できるとは限りません。
インスリン抵抗性は、血糖を調整するホルモンであるインスリンが、筋肉・脂肪組織・肝臓などで十分に働きにくくなる状態です。[1][3]
内臓脂肪が増えると何が起こり得る?
脂肪組織が過度に拡大すると、脂肪細胞の肥大、低酸素や細胞ストレス、免疫細胞の集積などが起こり得ます。こうした変化は、脂肪組織の低度の慢性炎症と関連しています。[1]
脂肪細胞や免疫細胞が出す炎症に関わる物質、脂肪の分解で増え得る遊離脂肪酸などは、インスリンの情報伝達に影響し得ます。そのため、脂肪組織の炎症は、インスリン抵抗性に関わる一因と考えられています。[1][2]
「内臓脂肪が多い=糖尿病」ではない
脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性の関連は、人を対象とする研究を含む総説で、皮下脂肪より内臓脂肪でより強く一貫していると整理されています。[2] しかし、これはすべての人に同じ結果が起こることを意味しません。年齢、遺伝、食事、身体活動、睡眠、肝臓や筋肉の脂肪蓄積、服薬なども関係します。
また、仕組みを調べる研究には細胞・動物研究も含まれます。これらは重要な手がかりですが、結果を人にそのまま当てはめることはできません。炎症とインスリン抵抗性は互いに影響する可能性もあり、単純な一本道の因果関係としては説明できません。
健診をどう生かす?
腹囲は内臓脂肪を考える手がかりの一つですが、それだけでインスリン抵抗性や病気を診断するものではありません。健診では血糖、HbA1c、血圧、脂質、肝機能などを総合的に確認しましょう。
気になる結果があるときは、自己流の極端な食事制限や、根拠が不十分なサプリメントに頼らず、医師・保健師などに相談することが大切です。治療中の人は、自己判断で薬や治療を変えないでください。
よくある質問
慢性炎症は自分で感じられますか?
脂肪組織に関係する低度の慢性炎症は、自覚症状がないことがあります。症状だけで判断せず、必要に応じて健診結果や医療者の評価を参考にしてください。
特定の食品やサプリで内臓脂肪は減らせますか?
特定の食品やサプリメントだけで内臓脂肪を減らせる、またはインスリン抵抗性を改善できると断定できる十分な根拠はありません。
まとめ
内臓脂肪の過剰な蓄積は、脂肪組織の低度の慢性炎症やインスリン抵抗性と関連し、その一因になり得ます。一方で、健康状態は複数の要因で決まります。健診結果を全体として確認し、必要に応じて医療者へ相談しましょう。
参考文献
Zatterale F, et al. Front Immunol. 2020. PubMed
Kratz M, et al. Front Endocrinol. 2019. PubMed
Petersen MC, Shulman GI. Physiol Rev. 2018. PubMed
NIDDK. Insulin Resistance & Prediabetes


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