認知症予防に関するよくある質問(FAQ)
- Q1:認知症は本当に予防できるのですか?
- A: はい、最新の研究(Lancet委員会報告)では、認知症の発症リスクのうち約40%は、生活習慣などの修正可能な要因によるものとされています。適切な対策で発症を遅らせたり、リスクを下げることが可能です。
- Q2:最も注意すべきリスク要因は何ですか?
- A: 中年期においては「難聴」が最大のリスク要因の一つとされています。音の刺激が減ることで脳の活動が低下するため、耳の聞こえが悪くなったら早めに補聴器を利用することが推奨されます。
- Q3:食事で気をつけるべきポイントは?
- A: 地中海食と高血圧予防食を組み合わせた「MIND食」が有効です。ベリー類、ナッツ、緑黄色野菜を積極的に摂り、赤身肉やバターを控えることが推奨されています。
【2026年最新】認知症予防に効果的な習慣14選|38.9%は予防できる?科学的根拠に基づいた具体策
監修・執筆者:生活習慣病予防アドバイザー 中山博之
参考資料:Lancet Commissions(2024年)、厚生労働省「認知症施策推進大綱」、国立長寿医療研究センター
はじめに:「もしかして…」という不安を抱えるあなたへ
「最近、さっきのことをすぐ忘れる」「会話の途中で言葉が出てこない」「親が同じ話を何度も繰り返すようになった」——そんな経験が増えていませんか?
認知症は現在、日本国内で約700万人(65歳以上の約5人に1人)が罹患していると推計されており、2025年以降もその数は増加し続けると予測されています(厚生労働省)。「自分はまだ若いから大丈夫」「なってしまったら仕方がない」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、ここで朗報があります。
世界的に権威ある医学誌『The Lancet』が設置した認知症予防・介入・ケア委員会(Lancet Commissions)は、2024年の最新報告書において、認知症の約38.9〜40%は、生活習慣の改善によって予防または発症を遅らせることが可能だと結論づけました。つまり、認知症は「防げる病気」の側面を大きく持っているのです。
この記事では、最新の科学的エビデンスに基づいて、今日から実践できる認知症予防の習慣を14のリスク要因と具体的なアクションプランとともに解説します。「難しそう」「何から始めればいいかわからない」という方でも、読み終えるころには「これならできる」と思えるはずです。
1. 認知症予防の最新常識:14の「修正可能なリスク要因」とは?
Lancet Commissionsが2024年の報告書で提示した「修正可能なリスク要因」は、以下の14項目です。これらに適切に介入することで、認知症リスクを理論上40%近く低減できると示されています。人生のステージごとに整理すると、どの年代でも予防策を取れることがわかります。
若年期(45歳未満)に対処すべきリスク
① 教育水準の低さ(寄与割合:約5%)
幼少期から青年期にかけての教育は、「認知的予備能(コグニティブ・リザーブ)」を高めます。これは脳がダメージを受けても機能を維持しようとするバッファーのようなもの。教育水準が高い人ほど認知症の発症が遅れるというデータは多数存在します。大人になってからでも、学び続ける習慣がこの予備能を育てることがわかっています。
中年期(45〜65歳)に対処すべきリスク
② 難聴(寄与割合:約7%)
14項目の中で最も寄与割合が高いのが難聴です。聴覚が衰えると脳への情報入力が減り、社会的孤立も加速します。補聴器の適切な使用が認知症リスクを有意に下げることが、2023年の大規模ランダム化比較試験(ACHIEVE試験)でも示されました。「聞こえにくくなったかな」と感じたら、早めに耳鼻科へ相談することが重要です。
③ 高血圧(寄与割合:約2%)
中年期における高血圧(収縮期血圧130mmHg以上)は、脳の微小血管を傷つけ、血管性認知症やアルツハイマー型認知症のリスクを高めます。減塩食の実践、適度な運動、必要に応じた降圧薬の使用が推奨されます。
④ 肥満(寄与割合:約1%)
BMI30以上の肥満は、慢性炎症を引き起こし、脳にとって有害なインスリン抵抗性を高めます。中年期の体重管理が、20〜30年後の脳の健康に直接影響することを忘れないでください。
⑤ 過度の飲酒(寄与割合:約1%)
週に21ユニット(日本酒換算で約7合)以上の飲酒は、直接的な神経毒性を持ちます。適度な飲酒(週14ユニット以下)が「予防的」という古い説は現在では否定的な見方が強まっており、「飲まないに越したことはない」というのが2026年現在の科学的コンセンサスに近づいています。
高年期(65歳以上)に対処すべきリスク
⑥ 喫煙(寄与割合:約2%)
たばこの煙は酸化ストレスを引き起こし、脳血管を傷つけます。重要なのは、禁煙すればそのリスクは非喫煙者のレベルに近づいていくことです。「今さら遅い」は誤りで、70代・80代の禁煙でも認知症予防効果が認められています。
⑦ うつ病(寄与割合:約2%)
うつ病は認知症の「結果」であると同時に「リスク要因」でもあります。うつ状態では海馬が萎縮しやすくなることが知られています。適切な治療と社会参加が重要です。
⑧ 社会的孤立(寄与割合:約5%)
人との交流は脳に対する最良のトレーニングです。孤独な生活を送る人は認知症リスクが1.5〜2倍になるというデータもあります。地域のコミュニティへの参加、友人との定期的な交流が脳を守ります。
⑨ 運動不足(寄与割合:約2%)
身体活動は脳血流を改善し、神経栄養因子(BDNF)の分泌を促します。詳しくは後述しますが、ウォーキングなどの有酸素運動が特に効果的です。
⑩ 大気汚染(寄与割合:約3%)
近年注目されているリスク要因が大気汚染です。PM2.5などの微粒子が血液脳関門を越えて脳内に蓄積し、神経炎症を引き起こすことが複数の研究で示されています。交通量の多い道路沿いへの居住を避けることや、大気汚染が激しい日の屋外活動を制限することが推奨されます。
⑪ 糖尿病(寄与割合:約2%)
慢性的な高血糖は脳血管と神経細胞を傷つけます。特に2型糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスクを1.5〜2倍にすることが知られており、「第3の糖尿病」と呼ぶ研究者もいます。血糖コントロールは脳の健康にも直結します。
【2026年注目】最新研究で加わった2つのリスク要因
⑫ 視力低下(寄与割合:約2%)
Lancet Commissionsの2024年報告書で新たに追加されたのが視力低下です。白内障や屈折異常による視力低下は、難聴と同様に脳への情報入力を減らし、認知機能の低下と関連することが示されています。定期的な眼科受診と適切な眼鏡・コンタクトレンズの使用、白内障の手術的治療が予防に寄与します。実際、白内障手術後に認知機能低下のリスクが低下したという研究も報告されています。
⑬ 高コレステロール(寄与割合:約1%)
2024年の報告書で新たに加えられたもう一つの要因が中年期の高コレステロール(LDLコレステロール高値)です。動脈硬化を介した脳血管障害のリスクに加え、アミロイドβの脳内蓄積とコレステロール代謝の関連も研究が進んでいます。食事改善やスタチン系薬剤の適切な使用が検討されます。
⑭ 頭部外傷(寄与割合:約3%)
交通事故やスポーツによる頭部外傷も重要なリスク要因です。ヘルメットの着用、転倒予防のための筋力・バランストレーニングが有効な対策となります。
2. 【食事編】脳を守る「MIND食」の実践ガイド
MIND食とは何か?
MIND(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)食は、地中海食とDASH食(高血圧予防食)を組み合わせ、特に脳の健康に焦点を当てた食事法です。米国ラッシュ大学の研究では、MIND食をよく守った人はそうでない人と比較して、アルツハイマー型認知症の発症リスクが最大53%低下したと報告されています。
積極的に摂りたい10の食品グループ
緑葉野菜を週6食分以上(ほうれん草、ケール、小松菜など)、その他の野菜を毎日1食分以上、ナッツ類を週5回以上(アーモンド、くるみなど)、ベリー類を週2回以上(ブルーベリー、いちごが特に推奨)、豆類を週4食分以上、全粒穀物を毎日3食分以上、魚を週1回以上(特にサーモン・サバ・いわしなどのDHA・EPA豊富な青魚)、鶏肉を週2食分以上、オリーブオイルを主な食用油として使用、ワインは飲むとしても1日1杯まで(ただし飲まない方がよいという見解も)。
日本の食事に置き換えると、毎日の味噌汁にほうれん草や豆腐を入れ、主食を白米から玄米や麦ご飯に変え、おやつをポテトチップスからくるみやブルーベリーに切り替えることが現実的な第一歩です。
控えるべき5つの食品グループ
赤身肉(週4食分未満に)、バター・マーガリン(1日大さじ1杯未満に)、チーズ(週1食未満に)、菓子類・スイーツ(週5食未満に)、揚げ物・ファストフード(週1食未満に)が目標値です。
継続するための心理的コツ
完璧に守ろうとするとかえって続きません。国立長寿医療研究センターが推進する「認知症予防食」でも強調されているように、「週に何点当てはまるか」という加点方式で考えることがポイントです。まず一つだけ変える——たとえば「おやつをくるみに変える」だけから始めてください。
3. 【運動・生活習慣編】脳を若く保つ3つのアプローチ
① 有酸素運動:1日20〜30分のウォーキングから始める
有酸素運動は脳血流を増加させ、海馬の神経新生(新しい神経細胞の誕生)を促すことが動物実験・ヒト対象研究の両方で確認されています。特に海馬はアルツハイマー型認知症で最初に萎縮する領域であり、ここを鍛えることは直接的な予防策となります。
推奨量は週150分の中強度有酸素運動(ウォーキング、水中歩行、自転車など)です。「中強度」とは「会話はできるが、歌は歌えない」程度の息の上がり方が目安です。
具体的な始め方として、最初の1週間は毎日15分のウォーキングから開始し、2週目から20分、1か月後に30分へと段階的に増やすことを推奨します。靴は必ずクッション性の高いウォーキングシューズを選び、転倒リスクを下げましょう。可能であれば、友人や配偶者と一緒に歩くことで社会的孤立の解消とも組み合わせられます。一人の場合は地域の「健康ウォーキングサークル」への参加が、複数のリスク要因を同時にカバーできる優れた選択肢です。
② デュアルタスク(二重課題):「ながら運動」の認知的効果
単純なウォーキングに加えて、歩きながら計算する、歩きながら会話するといった「二重課題」を組み合わせると、認知機能への刺激がさらに高まります。国立長寿医療研究センターのコグニサイズ(Cognicise)はその代表的な例で、ウォーキングしながら「3の倍数のときだけ手を叩く」などの課題を加えることで前頭葉機能を鍛えます。
知的活動として特に効果が高いのは、「新しいことを学ぶ」「他者とコミュニケーションする」活動です。スマートフォンのアプリで一人で行うパズルゲームよりも、囲碁・将棋・麻雀などのリアルな対面ゲーム、新しい楽器の習得、外国語学習(特に会話練習)のほうが、脳の複数の領域を同時に活性化させる点で優れています。なぜなら、「他者との予測不可能なやりとり」が前頭前野を強く刺激するからです。
③ 睡眠の質:アミロイドβを「洗い流す」グリンパティック系の活性化
2013年に科学誌『Science』に発表されたマウスの研究以来、睡眠中に脳の「排水システム」(グリンパティック系)が活性化し、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβを脳外に排出することが注目されています。ヒトを対象にした研究でも、睡眠不足(6時間未満)が続くとアミロイドβの蓄積が加速するデータが報告されています。
質の高い睡眠のための実践策として、毎日同じ時刻に起床すること、就寝1時間前のスマートフォン・タブレットの使用を控えること(ブルーライトがメラトニン分泌を抑制)、寝室を涼しく(18〜20℃程度)暗く保つこと、カフェインは午後2時以降避けること、寝酒は睡眠の質を下げるため控えることが挙げられます。目標は7〜8時間の連続した睡眠です。
4. 「年相応の物忘れ」と「認知症の兆候」——見極め方と相談先
正常な物忘れとの違いを知る
物忘れがあっても、必ずしも認知症とは限りません。以下の比較を参考にしてください。
「ヒントを与えれば思い出せる」「物忘れ自体を自覚している」「日常生活に支障がない」「出来事の一部を忘れる(例:昨日の夕食のメニュー)」——これらは加齢に伴う正常な変化のサインです。
一方、「ヒントを与えても思い出せない」「物忘れを自覚していない(周囲が気づく)」「日常生活に支障が出始めている(約束を忘れる、道に迷うなど)」「出来事そのものを忘れる(例:昨日の夕食を食べたこと自体を覚えていない)」「同じ話を短時間に何度も繰り返す」——これらは認知症の兆候として医療機関への受診が勧められます。
今すぐ相談できる窓口
気になる症状がある場合、以下の窓口を活用してください。
地域包括支援センターは全国の市区町村に設置されており、認知症に関する相談を無料で受け付けています。かかりつけ医に相談し、**「もの忘れ外来」「認知症疾患医療センター」**への紹介を受けることも有効です。認知症の人と家族の会(電話相談あり)も、家族が抱える不安を相談できる場所として機能しています。
早期に診断を受けることには大きなメリットがあります。現在承認されている疾患修飾薬(レカネマブ等)の恩恵を受けるためには、早期段階での介入が必要です。「まだ大丈夫」と先送りにすることのリスクは年々高まっています。
5. まとめ:予防は「今日から」始められる
認知症は「なってしまったら仕方がない病気」ではありません。Lancet Commissionsのデータが示す通り、約40%のケースは生活習慣の改善によって防いだり遅らせたりできる可能性があります。
14のリスク要因のうち、あなたが今日から取り組めるものは必ずあります。難聴に気づいていたなら耳鼻科に予約を入れる、運動習慣がないならまず明日の朝15分だけ歩いてみる、一人でテレビを見て過ごしていた時間を誰かとの会話に置き換える——小さな一歩が、10年後・20年後の脳の健康を守ります。
予防は早ければ早いほど効果的ですが、いつ始めても遅すぎることはありません。
70代で禁煙した人も、80代で補聴器をつけた人も、認知症リスクの軽減が確認されています。今この記事を読んでいるあなたが、何歳であっても、今日が最良のスタートラインです。
参考資料・引用元
- Livingston G, et al. “Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission.” The Lancet, 2024.
- 厚生労働省「認知症施策推進大綱」(2019年、2024年フォローアップ)
- 国立長寿医療研究センター「認知症予防に関するエビデンス」
- Marmol HE, et al. “Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline in older adults with hearing loss in the USA (ACHIEVE): a multisite, randomised controlled trial.” The Lancet, 2023.
- Jessen F, et al. “A conceptual framework for research on subjective cognitive decline in preclinical Alzheimer’s disease.” Alzheimer’s & Dementia, 2023.
本記事は医療情報の提供を目的としており、個々の症状に対する診断・治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は、医師・専門家にご相談ください。
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